昭和20年代から30年代にかけて、熱海・湯河原は東京方面からの新婚旅行のお客様で大変賑わっていたそうです。
当館にも金婚式をお迎えになられた方が度々お越しくださいます。
しかし、本日お越し下さったO様ご夫妻は、50年の時にはお体の調子が優れずに本日になってしまわれたそうですが、無事にまた「加満田」に来られた事を本当に喜んで下さいました。
その時に、当館から記念に差し上げた夫婦箸、手ぬぐいをお持ちになり、
「私たちが思い出として持っていても、残った人達が処分するのでは忍びない。迷惑でなかったら受け取って欲しい」とおっしゃました。
そして、「こちらのような静かな落ち着いた旅館で私達の結婚生活がスタート出来てよかった。先代女将には本当にお世話になりました。」と。
熨斗紙に包まれたまま黄ばんだ手ぬぐいに50年間のご夫妻の歩みが刻まれているかと思うと、あついものが込み上げてまいりました。
宿はお客様に思い出をお持ち帰りいただく所だと言っていたある女将の言葉を思い出し、このように人生に大きくかかわることの出来る仕事に付いた者として大きな責任を感じる一日でした。
O様ご夫妻の末長いご健康をお祈り申し上げます。